2019年11月03日

Vol.194「西田亙先生の講演を聞いて」

 ラグビーのワールドカップは南アフリカの優勝で幕を閉じましたが、ラグビーの魅力に取りつかれた1か月半でした。選手の皆さんもスタッフの皆さんもお疲れさまでした!

 昨日は愛媛県松山市で内科を開業している西田亙先生の講演を山形で拝聴しました。西田先生は糖尿病の専門医ですが、自身が40代の時に糖尿病に罹患し、その際歯周病の治療を併用したことから、内科医でありながら歯科関係者などに講演をして全国を飛び回っているスーパードクターです。自身の経験からの話ですので説得力がありますし、歯科に限らず獣医の分野まで勉強されていて、話の内容は日々進化し続けているのです。講演は情熱にあふれ、尾木ママ張りのお姉言葉を織り交ぜながらたくさんの笑いもとる、まさに講演のスペシャリストでした。

 西田先生は口の中を清潔にすることが全身の健康につながるいくつもの例を紹介されていました。西田先生が診ていた重度の糖尿病患者さんに対して、通常の治療のほかに歯科医院でしっかりと噛める入れ歯を作ったことで、劇的によくなった例を示されました。

 また、最も驚かされたエピソードは、35歳のアジア人女性が39週と5日で死産をしてしまったケースです。その母親は新進関連歯周炎で出血していたのですが、死産3日前に上気道感染で発熱を起こしていました。死産の際は猛烈な悪臭を放つ血性の羊水だったそうです。激しい繊毛羊膜炎臍帯炎、肺炎を生じており、繊毛膜、羊膜、胎児の肺と胃を埋め尽くす細菌が検出されたのです。その細菌こそ歯周病菌の一種・F.nucleatumだったのです!解剖医はその感染ルートは膣からではないことも同時に調べていたのです。つまり、母親の歯周病菌が上気道炎によって全身をめぐる血液内に侵入し、胎児の体内に侵入しわずか3日の間に命を奪ってしまったということなのです。

 さらに、その・F.nucleatumを羊水内に認めた妊婦においては100%・全員が早産であったといういことも驚きです。現在早産に関わる医療費は年間3兆円もかかっているそうです。もし、妊婦さんたちが定期的に歯科医院を受診し、口の中の細菌を減少させる、あるいは細菌の活動レベルを低下させれば、こういった問題を予防できるわけです。さらに細菌の立場になって考えると、同じ住居に住む家族間は行き来しやすいルートであり、家族全員で、あるいはお付き合いしている恋人同士で口の中をきれいにすることは、お互いの健康維持に直結する大切な予防なのです。

 現在の研究ではアルツハイマー患者の一部にP.gingivalisという歯周病菌が海馬内に存在していることがわかりました。このブログを読んでいる方の科中には歯ブラシをほんの数秒で終わらせている方、歯科医院にしばらく行っていない方はほとんどいらっしゃらないと思いますが、知り合いにそういった方がいたら、是非かかりつけの歯科医院を見つけて定期的に歯周治療を受けるようお声がけしてみてください。
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2019年10月07日

Vol.193「偉大な日本の警察官」

 ラグビーのワールドカップ、日本強いですね!ラグビーをした経験はありませんが、これほど面白いスポーツだったのかと改めて感じさせられました。スコットランド戦もぜひ勝ってほしいです!

 過去に何度かご紹介しましたが、昨日は仙台歯科医師会が行っている休日夜間診療の担当でした。午後7時から11までの4時間、五橋にある仙台福祉プラザの12階で診療を行うのですが、昨夜は非常に特殊な患者さんが来院されました。仙台のとある警察署の方から連絡があり、現在留置所にいる容疑者の方が歯が痛いので診てもらえるか?ということでした。もちろん我々は医療人ですので、病める人を拒む理由はありません。

 容疑者の方が車で待機している間に一人の警察官の方がいらっしゃって、まずはその方の年齢や主訴などの状況を教えてくださいました。また、多くの病院からたくさんの薬を処方されていることも知りました。こちらの了解を取るといったん待機していた車に戻り、計3名の警察官の方と患者さんが入室してきました。診療室の受付に入ると、その方が警察官にざっくばらんに話しかけていて、幾分緊張していた我々は拍子抜けする感じもありました。

 問診表の記載を終えた患者さんが警察官とともに診療室に入ってきましたが、TV以外では見たことがなかった手錠、腰ひもで拘束されたまま診療台に座っていただきました。患者さんは座るや否や、「そんな3人で囲んだら先生が診療しにくいだろう?」と警察官3人に話したんです。心の中で「勘弁してくれよ〜」と思っていましたが、警察官の方は同調することもなく平然とした表情でした。

 その方の症状は緊急性もなく入れ歯を作ることが最善の治療でしたが、あいにく休日夜間診療所は救急のための治療を行うところでしたので、事情を話したのですが、「俺はもうすぐ刑務所に行くからさ、それまでに入れ歯を作ってくれよ〜」とのこと。もっともな意見ですが、今まで放置していたままでいたこと、また、順序だてて入れ歯を作るために十分な時間もないことから、その話を一旦持ち帰ることになりました。

 診療所の3人のスタッフともども、緊張した30分ほどでしたが、私自身は警察官の方の立ち振る舞いには改めて感心させられました。自分のペースに乗せようとするその患者さんを、怒ることもなく、刺激することもなく、うまくリードしているように思いました。3名の警察官のうち2名は私より若い男性でしたが、立派な対応でした。思い返せば東日本大震災では、私自身7,8回検視に行きましたが、その現場でも最も過酷でつらい仕事をしていたのは日本の警察官と自衛官です。我が家はガスの復旧まで1か月以上かかりましたが、あの警察官や自衛官の懸命な仕事ぶりを見たら、愚痴など言っていられないと思いましたから…。日本の警察官の皆さん、本当にありがとうございます!
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2019年09月02日

vol.192「父が入院して」

 九州地方の皆様、豪雨の被害お気の毒です。一日も早く元の生活に戻ってほしいものです。

 1か月前、夜中に父が「息苦しい」と訴えたので、薬局に行って酸素ボンベを購入して使用してもらいました。心拍数も120回/分ほどでしたが少し落ち着いたので、そのまま朝を迎え病院へ行くと即入院となりました。もともと気胸持ちだったのですが、肺気腫を併発し肺から空気が漏れて肺がしぼんでいたとのことでした…。原因は60年以上にわたる喫煙です。

 今までも再三禁煙を勧めてきましたが長年の習慣には勝てず、本人も体に悪いことをわかっていながらやめることができずにいましたが、ついに肺が悲鳴を上げて入院となりなした。入院当日から胸腔ドレナージによる吸引で、肺を膨らませることで普通に呼吸もできるようになりました。担当の先生には肺がボロ雑巾のようになっているので、穴がふさがってもまた別なところに穴が開くかもしれないと言われたそうです…。

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 8月25日宮城県歯科医師会主催の東北大学医学講座で放射線診断科の講演を聞きましたが、富永先生に胸部X線の画像を数多く見せていただいたので、その資料を入院している父にも見せました。もちろん父も病院で自分のレントゲンも見せてもらっているわけで、今回は本当にタバコをやめるそうです。

 歯科医師として患者さんと向き合っている中、重度の歯周病に罹患している喫煙者の患者さんに禁煙を勧めるのですが、患者さんもわかってはいるのだけど…といった反応が多いのですが、今回の父の件を境に、もう一歩踏み込んだ禁煙指導をしたいと強く感じました。喘息持ちの児童の多くは、親が喫煙者であるという報告もあります。大阪大学歯学部の天野教授は「ご主人が喫煙者でホタル族であるときは、ご主人がベランダに出てタバコを吸っているのを見たら、カギをかけて1時間は部屋に入れないようにしてください。そのまま部屋に戻ると皆さんにも悪影響が出ますので…」と笑いながら説明していました。自分の身体だからと言わず、愛する家族や仲の良い友人のためにも、そして地球のためにも皆さんでタバコをやめて、きれいな環境、健康的な肉体をはぐくんでいきましょう。
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2019年07月23日

Vol.191「矯正治療のために歯を抜いてもいいのか?」

 なかなか梅雨明けしないですね。夏らしい日が待ち遠しいと思っております。

 さて、先日歯科医師同士で行っている勉強会で若手のまじめな先生が矯正治療の症例を提示してくれました。矯正にもいろいろな流派がありますが、その彼の治療は王道を歩んでいて、多くの歯科医師が賛同する内容でした。

 一方で、大変きれいな歯並びなのに、「顎が痛い」「口を開けると音がする」といった主訴で来院される患者さんがしばしばいます。その中で、歯並びをよくするために小臼歯を4本抜いてきれいな歯並びを獲得し他場合、次のような問題が生じる可能性があります。
1.かみ合わせの高さが低くなる
2.下の顎が後方へ移動して顎関節症になる
3.歯列全体が狭くなり、気道が狭くなる
実際の症例を見てみましょう。

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 初診時20歳代の女性の患者さんです。矯正治療としては100点の治療だと思います。しかし、この患者さんは「口を開けにくい」「口を開けると音がする」ことを機にされていました。実際にキャデイアックスという機械を使ってかみ合わせを調べてみたところ、次のような問題点が浮かびました。

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 このグラフは口を開けたり閉じたりする時の顎の動きを、左右側面から見た時の軌跡を示します。正常な方の動きは、口を開けるときと閉じるときの軌跡がほぼ一致しています。しかし、写真の患者さんは赤まるで囲んだ部分が示すように、口を閉じるときに右とは明らかに違う部分に止まってしまいます。これは左の奥歯のかみ合わせが2oほど低い状態であることを示します。このことにより口を開けると音がする「関節円板前方転位」という症状が発生します。この診断をもとにマウスピースを入れることで音は一切しなくなりました。

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 前歯に隙間がありますが、このマウスピースを使っていくうちに、この隙間が閉じていきます。それに従って、関節円板が正常な位置に復位し、顎の動きが正常になります。

 しかし本来は最初から顎の機能的な診査を行ったうえで矯正治療を行えば、このような問題は起きなかったはずです。そして、その機能的な診査に基づいた診断をすれば、多くの場合、抜歯をするという選択肢は生まれないと思います。抜歯矯正でも成功を収めている症例も数多く存在していると思います。しかし、最初からキャディアックスのような診断器具を用いて機能的な診査を行ったうえで、適切な治療計画を立てることが重要です。

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2019年06月01日

vol.190「温故知新」

 元号が令和となり、1ヶ月が経ちました。ブログもしばらくお休みをしてしまいました…。

 私が歯科医師になったのは1988年ですが、歯科界において1980年代は「歯周補綴」といって、歯周病が進行した状態に関して、被せ物でつないでグラつきを抑える治療がトピックスでした。1990年代は「インプラント」、2000年代は「審美修復治療」、2010年代は「精密歯科治療」が話題のテーマでした。精密歯科治療の中にはCTやマイクロスコープももちろんですが、CAD/CAMを使った治療は2000年代から用いられてきましたが、嘔吐反射のある方には苦痛である「型を採ること」をせず、専用のカメラで口の中をスキャンするだけで情報が得られ、模型にする必要もないので、技工所へ瞬時に情報を送ることが可能となりました。これは模型が要らないためエコでもあり、郵送代が節約され時短にもつながります。

 AIの発展により、今後歯科治療も大きく変わっていくことと思います。優秀な先生による遠隔治療や、ロボットによる正確無比な治療は、患者さんにとって可能性が広がることになると思います。医科の世界では、治療をより正確にイメージするため、VR,AR,MRそしてホログラフィーを活用して、3次元でシミュレーションできるようになってきました。本年2月にインプラント学会関東・甲信越支部学術大会に参加しましたが、その際拝聴した杉本真樹先生の話は本当に刺激的でした。杉本先生は毎日放送の「情熱大陸」にも出演したので、ご存知のかたも多いのではないかと思います。

https://www.facebook.com/watch/?v=1805416926177517

私が所属している勉強会の一つに「月一会」がありますが、前会長の菅崎直身先生は若手の歯科医師を育てる目的で、自院を提供して歯科治療のイロハを教えてきました。10年以上前はわたしもその受講生でした。2年前より10数名の受講者を対象にした8名の講師で
8回のコースの「基本を学ぶ会」をスタートしました。最新の治療とは異なりますが、歯科治療の「基本」を各分野ごとに丸一日、実習も兼ねたコースです。先月は懇親会も行いましたが、若手の先生方は皆さん真剣で、とても頼もしく見えます。

 先日、月一会の例会後の懇親会で、若い先生から「症例を見てほしい」ということで、PCでケースを相談していただきました。歯周病が進行していた患者さんでしたので、治療方針を聞きましたが、何点かアドバイスのできる部分がありました。そこをつめていくために、私の診断のステップを説明する必要性を感じたので、今夜その勉強会を行う予定になっております。そのメンバーは全員「基本を学ぶ会」の卒業生であり、勉強が続くことに喜びを感じます。我々の世代が引退する頃には治療体型も変わっていると思いますが、「基本を学ぶ会」の卒業生や若い先生方が歯科界をリードしていくことと信じています!
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2019年01月28日

Vol.189「適切な歯周治療を目指して」

 大坂なおみ選手の全豪オープン優勝!素晴らしいですね〜ホント元気をいただきました(^^)

 今までにも何度かご紹介しましたが、昨日は3ヶ月に1度ある休日夜間診療の当番でした。午後7時から11までの4時間で6名の患者さんが来院されました。五橋にある仙台福祉プラザで診療するのですが、応急承知がメインでその患者さんとはその後二度と会わない可能性が高いのですが、限られた時間内で色々なお話をしてきました。多くの患者さんはかかりつけの歯科医院があって、素晴らしい治療を受けている方ばかりでした。ただ、一人、重篤な歯周病に罹患している患者さんがいらっしゃいましたが、以前から指摘をされていた歯の部分が痛くなって来院されました。ポケットは10mmほどありましたし、レントゲンを撮ると、歯の根っこ全体を取り囲むように骨がなくなっており、その歯はブリッジの土台となる歯でもありました。

 あまりにも重篤な歯周病の歯をいたずらにそのままにしておくと、支えている骨の問題が隣の歯にも及んでしまい、本来使えるはずだったその隣の歯まで抜かないといけないレベルになってしまうことがあります。

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(赤丸の部分は横たわっている親知らずをいつまでも抜かなかったために、隣の歯の虫歯と歯周病、その一つ手前の歯も歯周病に罹患してしまい、赤丸で囲まれた3本の歯すべてを抜かなければならない状態でラインされた患者さんのレントゲン写真です。反対側に比べると一目瞭然です)

 しかし、その患者さんは毎月レーザー治療とアルカリ水の洗浄だけを繰り返していたと教えてくれました。その歯と噛み合う上の歯は、上下的にグラグラ動くレベルでした。どちらの歯も抜歯の適応である可能性が高かったのですが、かみ合わせの調整なども行われていませんでした。レーザー治療にも殺菌効果を期待できますが、本来その患者さんがなられるべき治療はもっと根本的な問題解決であり、適正な治療方針が適応されなければ、患者さんは不幸な時間を長く過ごすことになります。

 「AというBという歯磨き粉のほうがより殺菌効果がある」ということが事実だとしても、「Aという歯磨き粉からBという歯磨き粉を使ったら歯周病が治った」ということにはならないのです。われわれ歯科医師がその患者さんの歯周病の問題点を抽出して、歯周基本治療というステージで患者さんの反応を確かめて再評価し、その後治療方針を固めていくのです。一つ一つの事実が正しくても、それらの事実を総合的に診断し、的確な治療がなされなければ意味がありません。重篤な歯周病に関しては、日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会など、理論的な根拠に基づいた治療を行っているグループや、本当の意味でよく患者さんを「診る」病院で治療を受けていただくと安心できると思います。
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2018年11月01日

Vol.188 「インプラントのために歯を抜くことが良いのか?」

 一気に冷え込んできましたね。皆さん体調はいかがでしょうか?

 最近では医療界においてセカンド・オピニオンが当たり前の時代になってきました。治療方法、治療期間、治療費などについて説明を受けたとき、もっと他の方法はないのか?やすい治療はないのか?など、昔と違ってネットなどで情報を簡単に集めることができるようになりましたので、いろいろな意見を聞きやすくなったのだとも思います。

 当医院にもそういった相談を受けることが多いのですが、治療費よりも、歯を抜くか抜かないかといった相談が多い傾向にあります。1本の歯についての相談は、前の先生の判断が妥当である場合が多いです。我々歯科医療従事者もできるだけ歯を残そうという気持ちが前面にありますので、不必要に抜くことはありません。
しかし、インプラントの側面に立つと少々事情が異なる場合があります。インプラントがうまく機能するためには、インプラントを受け入れる骨が必要です。しかし、歯周病が進行した場合や歯の根っこが折れている場合など、歯を抜く時期が遅くなればなるほど骨が吸収して、インプラントを支える骨がなくなってしまう危険性があるのです。そういった背景から「早く歯を抜かないと骨がなくなってしまいますよ」と患者さんに宣告する場合があるのです。

 その点において、歯周病学会の会員とインプラント学会の会員では全く異なる治療方針を立てることが少なくありません。ここで大切なことは「なぜその対象の歯を抜かなければならなくなったか?」という原因論です。もちろん歯周病の原因は細菌ですが、どうしてその歯が対象になったのか?という他の歯との比較が大切です。この問題を解決しないまま歯を抜いてインプラントを埋めたとしても、そのインプラントもだめになっていく可能性が高いわけです。その原因を明確にして対策を講じた上でインプラントが最良の治療法だと判断したときはじめてそのための治療方針を固めていけばいいのです。
 
 インプラントのあるグループの先生方は、「インプラントを予定している箇所が複数あって、その間に神経を抜いた歯があったら、症状がなくても抜いてしまって、インプラントで治したほうが良い」と言っているかたもいます。神経を抜いた歯は抜いていない歯に比べて寿命が短いことは事実ですが、症状も何もないのに抜いてしまう治療は本当に良いのでしょうか?

 つい先日来院された方も、「残っている歯をすべて抜いてインプラントで治療しましょう」というプランに疑問を持ち、相談にいらっしゃいました。少しずつその原因が解明されてきたので、焦らずに残っている歯をしっかりと残すことから治療を開始する予定です。医療の基本は「診断」です。抜かなければならない歯はなぜそうなったのか?抜かなければならないとして抜群のタイミングはいつのなのか?一つ一つが診断です。この入口さえ間違わなければ、必ず良いゴールにたどり着けます。
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2018年09月02日

Vol.187「歯周病がなぜ起こる?」

 平成30年も9月を迎えました。暑い夏が続いていますが、皆さん体調はいかがでしょうか?

本日9月2日、仙台国際センターにおいて宮城県歯科医学大会が開催されました。講師には大阪大学歯学部の天野敦雄先生をお迎えして「歯周病はなぜ起こる?」―21世紀の病院論をご存知ですか?―という演題でご講演いただきました。

 「かかりつけ歯科医をもつ人は寿命が長く、要介護にもなりにくい」「かかりつけ内科医では寿命は伸びない」という話から講演は始まりました。そして歯周病の主治医は患者さん自身であり、歯科医院はそのお手伝いをするところである立ち位置の説明もされました。

 日本人の約8割が歯周病だと言われていますが、約1割の人は重症度のひどく、その方には歯周病菌の中でも毒性の強い細菌が住み着いているそうです。その細菌は鉄分が大好きでその鉄分を血液から取り込みます。歯ブラシがおろそかになり歯と歯ぐきの間にたまっていくと、体は細菌の侵入を防ぐために血液から白血球を送り出します。その結果少しの刺激で容易に出血するようになり毒性の強い細菌が全身を巡ることができるようになってしまうのです。2017年の段階で歯周病と関連のあるといわれている疾患は糖尿病をはじめ100種類以
上あると言われています。歯周病の治療は全身状態を良くすることにもつながるのです。

 また、歯科医院で歯科衛生士が専用の器具を使って患者さんの口の中をピカピカに磨き上げたとして、細菌の種類が悪玉菌優勢になるのに12週から16週になると言われているので、定期検診が重要になるわけです。当医院では患者さんに応じてメインテナンスの時期を選んでいます。資料の積み重ねはその後の予測に繋がりますので、大変重要です。転勤などで引っ越しをされる際もデータのやり取りが可能なので、転居先にデータを送ることもしています。

 天野先生は現代医学では歯周病は完治しないので、定期的に歯科医院でクリーニングすることが歯周病を悪化させないために重要であると力説していました。また2017年6月5日の国会中継で自民党の山田宏議員の質問を紹介していました。みなさんも19分30秒あたりから6分間くらいご覧いただければと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=PBR9EJqEGA

また、品川女子学院インターアクト部の動画も紹介してくださいました。ぜひご覧ください!

https://www.youtube.com/watch?v=PwKaY1nL-zI

 天野先生の講演はためになるだけでなく、大変面白いのです!生まれは高知県ですが、今や完全な大阪人です。歯科関係者の皆さんにはぜひ一度聞いていただきたい素晴らしい先生の一人です(^^)


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2018年07月09日

Vol.186 「第36回日本臨床歯周病学会年次大会」

 7月6日より西日本を中心に豪雨が発生しました。皆さんは大丈夫でしたでしょうか?

 私は毎年この時期に行われる日本臨床歯周病学会に参加するため6,7日を休診にして広島での学会にでかけました。

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仙台〜広島便は8:00発と12:10発があるのですが、お昼から会議があったため、8:00発の便で広島へ向かいました。着陸後、広島市内へ移動するつもりでしたが、空港でJRもリムジンバスも大幅な遅れが出ているというアナウンスが有りました。バスを選択したのですが、高速道路が通行止めということで、一般道路を走行していきました。広島空港は山の中にある空港なので、一般道はバスが通るような太い道路ではなく、かなりゆっくりとしたペースでの走行でした。しかし途中から高速道路に乗ることができたので、20分程度の遅れで済みましたので会議にも無事間に合いました。

 ところが東京、大阪、福岡から新幹線で広島入りする予定だった学会員は山陽新幹線がストップしたため、足止めをくらい、東京、大阪組はおそらく5時間ほどの遅れで広島に到着しました。三役会、理事会はメンバーの半数ほどしか参加していませんでした…。

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 7日土曜日は学会の初日でしたが、演者のほとんどが広島入りできない状態でしたので、午前中の予定はすべてキャンセル。午後は一般講演を歯科医師、歯科衛生士で合計3題のみ発表、特別講演を3題行い終了となりました。 

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(大半が空白のままのポスター会場)

 2日目の日曜日になり、新幹線が動いたため九州の学会員も続々広島入り、我々東北組は空港までの道路状況が刻一刻と変わっていたこともあり、総会終了後すぐに新幹線で仙台へ向かいました。6時間かかりましたが、無事仙台に帰ることができました。

 今回の豪雨では死者が90名を超えたとのことで、被害に遭われた方、ご家族は本当にお気の毒でした…。3年間準備をしてきた中国四国支部の実行委員の皆様はその場その場での判断をしなければならず、本当に大変でした。2011年東北で行われる予定だった本学会の年次大会は中国四国支部設立記念大会と形を変え、大変お世話になった経緯がありますので、なんとも言えない気持ちです。しかし実行委員の皆様の精一杯のおもてなしには心から感謝です。残務整理が通常よりも多いと思われますが、頑張っていただいたいです!

ここからは友人たちの大変な状況を紹介します。

【東北支部】
 6日12:10仙台発の便で広島空港へ向かうも、広島到着間際に視界不良のため仙台空港に引き返し、伊丹空港へ乗り換えました。伊丹空港から新大阪までは大渋滞の中なんとか移動、新幹線で広島に向かうも、岡山駅で停車19時間(車中泊を含む)、動き始めたのは7日の18時、帰路も危うくなり、新大阪方面へ引き返しました。

【東北支部】
 土曜の夕方の時点で帰れないと思った。
なので、岩国空港を調べたら羽田と那覇便がある。羽田は満席。
那覇からは、千歳や仙台は当然で羽田や中部、伊丹が満席。
那覇〜福岡だけが一席空いてた。
当初から復路は福岡〜伊丹〜仙台をとってたので都合が良い、今しかない!ってことで岩国〜那覇〜福岡を予約を。しかし高額。なので株主優待券を医院でお留守番のスタッフに頼んで写メ送信。株主価格でチケット手配。
タクシーの配車センターに電話したら5:00 ならOK だということでそっちも手配 。
その後、新幹線が動きそうだったけど、また雨が降り出すとのことだったので予定通り5:00 出発。
普段高速使って1時間の道のりが下道で45分。
空港が開く前に着いて、出発まで5時間待ち。
建物の中に入って一息してスマホで山陽新幹線が通常運転と知る。
ガビーん!
一方で岩国〜羽田便のキャンセル待ちが数名呼ばれる。
俺、間違ってるか?と思ったら24時間待ち。昨日も来てたらしい。
まぁ、それでも那覇でソーキそば&海ぶどう食べるまでは良かった。
福岡での乗り継ぎが30分しか無かったのに、出発が25分遅れた。
福岡〜羽田便を仮予約してから、那覇〜福岡便に搭乗。
やはり25分遅れで到着。
そしたら福岡〜伊丹便も出発20分遅れ。
しかも、出発が7番ゲートで到着したのが6番ゲート。
ドアからドアか!と思ったら隣のターミナル。
早歩きで行って仮予約した分をキャンセルしてたら搭乗始まってた。
伊丹での乗り継ぎは60分 - 20分あるから余裕。
6番ゲートに着いて出発も6番ゲート。
搭乗したらCA さんに「おかえりなさい」と言われた。
それで、仙台空港視界不良につき条件付き。
ダメだったら関西国際空港に戻るかも。
無事に着陸出来たからいいけど関空だったら立ち直れない。
ホテルから家に着くまで18時間の荒行でした

【関東支部】
 7日の段階で新幹線が危ういとのことで、広島から岩国へ移動しそこから羽田への移動を考えて、メンバーで乗り捨てレンタカーを確保!当初の予約に対して、無料で振り替えてもらえ、振替してもらった便は19時半発のため、時間的にも十分な余裕があり道もすいていて結構快適なドライブをしていました。

 途中寄り道して観光する余裕もあり「よかったね〜」という楽勝ムードが車内に広がっていました。
ところが道のりの二分の一か三分の二くらいのところで、大どんでん返し、
「お客様の搭乗予定の便は機材整備のため欠航となりました」のメール!
なんじゃそりゃ〜!一同愕然となりました。

それから色々なところに電話したりしてかなり色々な試練を受けながら、
(話せば長くなりますが)
結局広島駅からこだまで東広島へ、そこからタクシーで広島空港へ行き、
20時50分の便で羽田に帰りました。

あとから思えば面白い思い出となるでしょうが、大変でした。


他にも大変な思いをされた方が多いと思います。
もちろん学会員だけでなく、家族を失った方、家を失った方、本当にお気の毒です。
お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りいたします。
posted by 副院長 at 19:32| Comment(0) | TrackBack(0) | '18ニュースレター

2018年06月12日

Vol.185 「患者さんの声に耳を傾ける」

 今年はスポーツ界の不祥事がずいぶんと取り上げられた上半期でしたね…。やはりスポーツはする人も見る人も元気になれる存在であってほしいと思います。

 昨年の12月、一人の顎関節症の患者さんが来院されました。以前通っていた何件かの医院でも治療をしてもらっていたそうですが、患者さんの満足するところへは届いていなかったそうです。初診日にお会いする前から自らの病院歴を綴ったFAXをいただくなど、その悩みの深さを目の当たりにしました。

 一見歯並びもきれいでさほど問題がないように見えてしまいますが、大臼歯部しか噛んでおらず、その大臼歯は(治療目的で)溝が埋められており、オリジナルの噛みあわせから離れていっているように感じました。通常通りレントゲンとアキシオグラフという噛みあわせを診る機械で診査をし、その患者さんに最適な噛みあわせを確定し、その位置で噛めるように作製したマウスピースをセットしました。しかし、安定しない下あごはそこで収まらず、アチラコチラに動けてしまうため、一点に定まるような2個目のマウスピースをセットしました。それでも下あごが後ろに入ってしまう現象を止めることができず、私も治療方針に悩んでしまう時期がありました。

 前医からのネガティブな情報提供があったため、私の提案する治療方針になかなか賛同してくれない時期がありました。しかし、患者さんも必死です。「こうしたらいいんじゃないか?」といろいろなアイディアを私にくれました。私もそのアィディアに対してまっさらな気持ちで接したおかげで、新たな治療法を見つけることもできました。

 現在のその患者さんの状態は、この方向の先にゴールがあると確信してくれていると思います。しかし、顎関節症を悩んでいる患者さん全てに対して、同じ方向を向くことができるように治療ができているわけではありません。私自身のいろいろな意味での成長が必要だとは思いますが、本当の意味で「患者さん声に耳を傾ける」ことの大切さを、改めて実感いたしました。歯科医学は科学の一分野ですから、理論的背景を成書から学ぶ姿勢は今後も続けていきますが、目の前の患者さんから新しい治療法を見つけるヒントを貰えることに気づけたこと、心から感謝いたします(^^)
posted by 副院長 at 15:23| Comment(0) | TrackBack(0) | '18ニュースレター

2018年04月23日

Vol.184「毎月フッ素を塗らないと虫歯になる?」

 エンジェルスの大谷選手、大活躍ですね!不可能を可能にし、誰も歩んでいない道をどんどん突き進んで行っていて、本当に頼もしい限りです(^^)

 さて、現代ではインターネットの普及によって、簡単にいろいろな情報を得ることができるようになりました。専門的な知識でさえ、ネット検索であっという間に情報を得ることができます。
 しかし、その情報が信憑性のあるものかどうかについては、よく検証しなければなりません。情報についてはインターネットばかりでなく、中立的な立場になって考えないと、バイアスがかかった状態での知識となり、本当の意味で自分にプラスにならない方向へ導かれることもしばしばあると思います。
歯科の領域でも様々な怪しい謳い文句を見ることが少なくありません。
・歯周病が簡単に治る魔法の水
・3ヶ月ごとの定期検診で虫歯ゼロ
・インプラントは恐ろしい治療
・顔の歪みは整形手術をしなければ治らない
挙げればキリがありません。先日3歳と1歳半の男の子が「虫歯予防のためのフッ素を塗ってほしい」ということで来院されました。診てみるとお兄ちゃんは虫歯もなくきれいな歯でしたので、その日はクリーニングとフッ素を塗布し終了、弟くんはまだうまくうがいができないとのことでしたので、「半年後にお会いしましょう」とお母さんに伝えました。するとそのお母さんが「3月まで通っていた歯科医院では3ヶ月に1回フッ素を塗らなければならない。弟は上の子より虫歯になりやすいから毎月塗らなければならない」と言われていたというのです!

 歯科衛生士が徹底的に歯を磨いてきれいな状態になったとして、その後患者さんが自分自身ではうまく歯ブラシが当てられないエリアがあったとして、そこが悪玉菌支配になるのに12週から16週かかるので、3ヶ月に1回の定期検診が望ましいといった文献が多いので、3ヶ月に1回の定期検診を勧める歯科医院が多いのです。しかし実際にはリスクの少ない方はそこまでしなくても十分な場合が多いと思います。うがいもうまくできないお子さんにまでフッ素を塗るよりも、理想的な食生活を指導するほうがはるかに大切です。
 適切ではないと思われる情報に関しては、少なからず正していければと思っていますので、ブログの中で公開していきたいと思います。

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2018年02月22日

Vol.183「院内勉強会」

 みなさんも毎日平昌オリンピックをご覧になっていることと思います。メダルを獲ったかたもそうでない方も、オリンピックに出られる実力は素晴らしいことだと思います!

 さて、当医院では2001年から院内勉強会を行っています。この勉強会は当医院のスタッフのみで行う勉強会で、テーマを決めてともに学ぶための時間です。当初は私が講義をする形を取っていましたが、新潟で開業されていた故・原田富一先生のシステムに倣って、スタッフも発表する形を2002年から取り入れました。お口の中の写真、レントゲン、ポケットを測定した資料などをスライドにして、スクリーンに映し出して情報を共有しながら医院全体で診断や治療のレベルを上げる努力をしています。

 昨日もこの勉強会を行いましたが、発表は歯科衛生士の鎌田が担当しました。今までの通常の発表は、その患者さんの問題点を挙げて、どのように進めることが良いのかを考えて、実際の治療のステップを紹介し、今後考えられる問題点をどのように乗り切るかについてを報告することが多かったのです。しかし、昨日の鎌田の発表は、さらにその上をいくものでした。重篤な歯周病の患者さんに対して、奥歯のかみ合わせの問題を指摘して、「アイヒナーの分類」というとても重要なかみ合わせの分類について説明し、さらに類似している参考症例をも盛り込んで、比較・対象をしながら、問題点をまとめていきました。実際鎌田の治療の成果も良く、単に歯についている歯石をきれいに取り去るだけでなく、患者さんとともにその患者さんの健康に大きく寄与することができていました。患者さんも鎌田のことをとても信頼していることもよくわかっています。

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 一人ひとりの患者さんとの接する時間が良い意味でも悪い意味でも長くなってしまうことが歯科治療の特徴だと思うのですが、そのことによって疾患を治すというよりも、患者さんのより良い健康状態になることのお手伝いができて、ひいては患者さん自身が元気になれる、歯科はとても素敵な職種だと思っています。後輩衛生士も良い見本である先輩を見習って頑張ると話しているのことを聞いて、とても頼もしく感じました。
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