2019年07月23日

Vol.191「矯正治療のために歯を抜いてもいいのか?」

 なかなか梅雨明けしないですね。夏らしい日が待ち遠しいと思っております。

 さて、先日歯科医師同士で行っている勉強会で若手のまじめな先生が矯正治療の症例を提示してくれました。矯正にもいろいろな流派がありますが、その彼の治療は王道を歩んでいて、多くの歯科医師が賛同する内容でした。

 一方で、大変きれいな歯並びなのに、「顎が痛い」「口を開けると音がする」といった主訴で来院される患者さんがしばしばいます。その中で、歯並びをよくするために小臼歯を4本抜いてきれいな歯並びを獲得し他場合、次のような問題が生じる可能性があります。
1.かみ合わせの高さが低くなる
2.下の顎が後方へ移動して顎関節症になる
3.歯列全体が狭くなり、気道が狭くなる
実際の症例を見てみましょう。

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110606上・井上珠里.jpg110606下・井上珠里.jpg
 初診時20歳代の女性の患者さんです。矯正治療としては100点の治療だと思います。しかし、この患者さんは「口を開けにくい」「口を開けると音がする」ことを機にされていました。実際にキャデイアックスという機械を使ってかみ合わせを調べてみたところ、次のような問題点が浮かびました。

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 このグラフは口を開けたり閉じたりする時の顎の動きを、左右側面から見た時の軌跡を示します。正常な方の動きは、口を開けるときと閉じるときの軌跡がほぼ一致しています。しかし、写真の患者さんは赤まるで囲んだ部分が示すように、口を閉じるときに右とは明らかに違う部分に止まってしまいます。これは左の奥歯のかみ合わせが2oほど低い状態であることを示します。このことにより口を開けると音がする「関節円板前方転位」という症状が発生します。この診断をもとにマウスピースを入れることで音は一切しなくなりました。

110704正・井上珠里.jpg 

 前歯に隙間がありますが、このマウスピースを使っていくうちに、この隙間が閉じていきます。それに従って、関節円板が正常な位置に復位し、顎の動きが正常になります。

 しかし本来は最初から顎の機能的な診査を行ったうえで矯正治療を行えば、このような問題は起きなかったはずです。そして、その機能的な診査に基づいた診断をすれば、多くの場合、抜歯をするという選択肢は生まれないと思います。抜歯矯正でも成功を収めている症例も数多く存在していると思います。しかし、最初からキャディアックスのような診断器具を用いて機能的な診査を行ったうえで、適切な治療計画を立てることが重要です。

posted by 副院長 at 14:14| Comment(0) | TrackBack(0) | '19 ニュースレター