2015年02月19日

Vol.151「抜歯をしない矯正治療の実践」

 プロ野球もキャンプイン、楽天イーグルスは大久保新監督のもと、新たなチームとして活躍することを願っています。

 前回のニュースレターでは、顎を切る手術には賛成できないといった内容のブログを書きましたが、今回は「抜歯をしない矯正治療」について触れてみたいと思います。矯正界では、Angleという先生が抜歯を伴う矯正をせず、全体を拡大するような治療を推進してきました。一方、この手法だと口元が盛り上がってしまい、審美的によくないこともあるため、Tweed先生は小臼歯を抜歯して歯を並べる治療を普及させました。特に叢生といって、歯並びがガチャガチャしている方の場合、歯を抜くことでそのスペースが確保できるため、後戻りが少ないこともその長所に挙げられます。

 しかし、本当に抜歯を伴う矯正治療が理想なのでしょうか?小臼歯の抜歯の問題点として以下の点が指摘されています。
@前歯が過剰に後ろに下がってしまう
A下あご全体が後ろに下がってしまう
B噛み合せの高さが低くなってしまう
C舌のスペースが狭くなってしまう
D小臼歯そのものの役割の欠如してしまう

 Aの下あごが後ろに下がってしまう問題ですが、以前から何度か指摘しているように、顎関節症のほとんどは、下あごが後ろに下がってしまう病気です。小臼歯を抜歯することは顎関節症を引き起こす可能性が高くなるということです。

 Dの小臼歯そのものの役割ですが、噛み合わせの位置を保持する「支持」の役割と、下あごの動きを理想的に誘導するという2つの役割を担っています。

 事実、HPを見て来院された患者さんの中に、とても綺麗に仕上がっている矯正治療であるにも関わらず、顎関節症になっている方を見ることがしばしばあります。
【Sさんの術前】
術前正.jpg
術前上.jpg
術前下.jpg
(歯は綺麗に並んでいますが、小臼歯が4本抜歯されています。右の耳が聞こえにくいとおっしゃっていました)

【Sさんの術後】
術後正.jpg術後上.jpg術後下.jpg
(噛み合わせの位置を変えて、顎関節症が治ったあとの写真です。正面の写真を見ると、下の前歯の見える長さが長くなったことでかみ合わせが変わったことがわかると思います。治療前はあごがカクカクしていましたが、術後はあごの動きもスムーズになり、耳もすっかりよくなりました。)

 一方、抜歯をしない矯正治療の欠点として上下の唇の突出感(口元が盛り上がる)が挙げられます。しかし、シークエンシャル咬合のコンセプトではこの問題を実に理論的に解決します。それはかみ合わせを垂直的に挙げることで歯の傾斜角を維持するといういことです。「矯正治療」のページの症例Eの患者さんですが、歯を1本も抜いていませんが、口元は治療前よりも綺麗になり、とても素敵な笑顔になりました。

Dibbets先生によると、矯正治療終了後に「あごがカクカクなる」といった雑音の発現率は、小臼歯を抜歯して治療をした患者さんの集団では、一般の矯正治療に比べ2倍であったとのことです。

 矯正治療は必ずと言ってよいほど噛み合せの位置が変化します。単に見た目を良くすることだけを考えて治療をした場合、思わぬ結果を招く危険性があるわけです。治療前にしっかりとした治療のゴールを設定し、治療計画を練ると、抜歯が必要な症例がないことを認識し、平成17年からは小臼歯を抜かない治療を進めてきました。

 われわれ歯科医師は「歯を残す」治療を日々行っています。親知らず以外は歯を健全なまま抜歯をしない治療が当たり前になる日を信じています。
posted by 副院長 at 19:03| Comment(0) | TrackBack(0) | '14ニュースレター
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/113955826

この記事へのトラックバック