2018年11月01日

Vol.188 「インプラントのために歯を抜くことが良いのか?」

 一気に冷え込んできましたね。皆さん体調はいかがでしょうか?

 最近では医療界においてセカンド・オピニオンが当たり前の時代になってきました。治療方法、治療期間、治療費などについて説明を受けたとき、もっと他の方法はないのか?やすい治療はないのか?など、昔と違ってネットなどで情報を簡単に集めることができるようになりましたので、いろいろな意見を聞きやすくなったのだとも思います。

 当医院にもそういった相談を受けることが多いのですが、治療費よりも、歯を抜くか抜かないかといった相談が多い傾向にあります。1本の歯についての相談は、前の先生の判断が妥当である場合が多いです。我々歯科医療従事者もできるだけ歯を残そうという気持ちが前面にありますので、不必要に抜くことはありません。
しかし、インプラントの側面に立つと少々事情が異なる場合があります。インプラントがうまく機能するためには、インプラントを受け入れる骨が必要です。しかし、歯周病が進行した場合や歯の根っこが折れている場合など、歯を抜く時期が遅くなればなるほど骨が吸収して、インプラントを支える骨がなくなってしまう危険性があるのです。そういった背景から「早く歯を抜かないと骨がなくなってしまいますよ」と患者さんに宣告する場合があるのです。

 その点において、歯周病学会の会員とインプラント学会の会員では全く異なる治療方針を立てることが少なくありません。ここで大切なことは「なぜその対象の歯を抜かなければならなくなったか?」という原因論です。もちろん歯周病の原因は細菌ですが、どうしてその歯が対象になったのか?という他の歯との比較が大切です。この問題を解決しないまま歯を抜いてインプラントを埋めたとしても、そのインプラントもだめになっていく可能性が高いわけです。その原因を明確にして対策を講じた上でインプラントが最良の治療法だと判断したときはじめてそのための治療方針を固めていけばいいのです。
 
 インプラントのあるグループの先生方は、「インプラントを予定している箇所が複数あって、その間に神経を抜いた歯があったら、症状がなくても抜いてしまって、インプラントで治したほうが良い」と言っているかたもいます。神経を抜いた歯は抜いていない歯に比べて寿命が短いことは事実ですが、症状も何もないのに抜いてしまう治療は本当に良いのでしょうか?

 つい先日来院された方も、「残っている歯をすべて抜いてインプラントで治療しましょう」というプランに疑問を持ち、相談にいらっしゃいました。少しずつその原因が解明されてきたので、焦らずに残っている歯をしっかりと残すことから治療を開始する予定です。医療の基本は「診断」です。抜かなければならない歯はなぜそうなったのか?抜かなければならないとして抜群のタイミングはいつのなのか?一つ一つが診断です。この入口さえ間違わなければ、必ず良いゴールにたどり着けます。
posted by 副院長 at 15:30| Comment(0) | TrackBack(0) | '18ニュースレター

2018年09月02日

Vol.187「歯周病がなぜ起こる?」

 平成30年も9月を迎えました。暑い夏が続いていますが、皆さん体調はいかがでしょうか?

本日9月2日、仙台国際センターにおいて宮城県歯科医学大会が開催されました。講師には大阪大学歯学部の天野敦雄先生をお迎えして「歯周病はなぜ起こる?」―21世紀の病院論をご存知ですか?―という演題でご講演いただきました。

 「かかりつけ歯科医をもつ人は寿命が長く、要介護にもなりにくい」「かかりつけ内科医では寿命は伸びない」という話から講演は始まりました。そして歯周病の主治医は患者さん自身であり、歯科医院はそのお手伝いをするところである立ち位置の説明もされました。

 日本人の約8割が歯周病だと言われていますが、約1割の人は重症度のひどく、その方には歯周病菌の中でも毒性の強い細菌が住み着いているそうです。その細菌は鉄分が大好きでその鉄分を血液から取り込みます。歯ブラシがおろそかになり歯と歯ぐきの間にたまっていくと、体は細菌の侵入を防ぐために血液から白血球を送り出します。その結果少しの刺激で容易に出血するようになり毒性の強い細菌が全身を巡ることができるようになってしまうのです。2017年の段階で歯周病と関連のあるといわれている疾患は糖尿病をはじめ100種類以
上あると言われています。歯周病の治療は全身状態を良くすることにもつながるのです。

 また、歯科医院で歯科衛生士が専用の器具を使って患者さんの口の中をピカピカに磨き上げたとして、細菌の種類が悪玉菌優勢になるのに12週から16週になると言われているので、定期検診が重要になるわけです。当医院では患者さんに応じてメインテナンスの時期を選んでいます。資料の積み重ねはその後の予測に繋がりますので、大変重要です。転勤などで引っ越しをされる際もデータのやり取りが可能なので、転居先にデータを送ることもしています。

 天野先生は現代医学では歯周病は完治しないので、定期的に歯科医院でクリーニングすることが歯周病を悪化させないために重要であると力説していました。また2017年6月5日の国会中継で自民党の山田宏議員の質問を紹介していました。みなさんも19分30秒あたりから6分間くらいご覧いただければと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=PBR9EJqEGA

また、品川女子学院インターアクト部の動画も紹介してくださいました。ぜひご覧ください!

https://www.youtube.com/watch?v=PwKaY1nL-zI

 天野先生の講演はためになるだけでなく、大変面白いのです!生まれは高知県ですが、今や完全な大阪人です。歯科関係者の皆さんにはぜひ一度聞いていただきたい素晴らしい先生の一人です(^^)


posted by 副院長 at 16:11| Comment(0) | TrackBack(0) | '18ニュースレター

2018年07月09日

Vol.186 「第36回日本臨床歯周病学会年次大会」

 7月6日より西日本を中心に豪雨が発生しました。皆さんは大丈夫でしたでしょうか?

 私は毎年この時期に行われる日本臨床歯周病学会に参加するため6,7日を休診にして広島での学会にでかけました。

SnapCrab_NoName_2018-7-9_19-7-46_No-00.jpg

仙台〜広島便は8:00発と12:10発があるのですが、お昼から会議があったため、8:00発の便で広島へ向かいました。着陸後、広島市内へ移動するつもりでしたが、空港でJRもリムジンバスも大幅な遅れが出ているというアナウンスが有りました。バスを選択したのですが、高速道路が通行止めということで、一般道路を走行していきました。広島空港は山の中にある空港なので、一般道はバスが通るような太い道路ではなく、かなりゆっくりとしたペースでの走行でした。しかし途中から高速道路に乗ることができたので、20分程度の遅れで済みましたので会議にも無事間に合いました。

 ところが東京、大阪、福岡から新幹線で広島入りする予定だった学会員は山陽新幹線がストップしたため、足止めをくらい、東京、大阪組はおそらく5時間ほどの遅れで広島に到着しました。三役会、理事会はメンバーの半数ほどしか参加していませんでした…。

C4765BAB-DCD8-4ED2-A83D-E5F88C50B8AF-7686-00001A7E7B7BD1AE.JPG

 7日土曜日は学会の初日でしたが、演者のほとんどが広島入りできない状態でしたので、午前中の予定はすべてキャンセル。午後は一般講演を歯科医師、歯科衛生士で合計3題のみ発表、特別講演を3題行い終了となりました。 

F14CE859-DC00-464B-BAB9-01C42EC5E088-8443-00001AD8665174F8.JPG
(大半が空白のままのポスター会場)

 2日目の日曜日になり、新幹線が動いたため九州の学会員も続々広島入り、我々東北組は空港までの道路状況が刻一刻と変わっていたこともあり、総会終了後すぐに新幹線で仙台へ向かいました。6時間かかりましたが、無事仙台に帰ることができました。

 今回の豪雨では死者が90名を超えたとのことで、被害に遭われた方、ご家族は本当にお気の毒でした…。3年間準備をしてきた中国四国支部の実行委員の皆様はその場その場での判断をしなければならず、本当に大変でした。2011年東北で行われる予定だった本学会の年次大会は中国四国支部設立記念大会と形を変え、大変お世話になった経緯がありますので、なんとも言えない気持ちです。しかし実行委員の皆様の精一杯のおもてなしには心から感謝です。残務整理が通常よりも多いと思われますが、頑張っていただいたいです!

ここからは友人たちの大変な状況を紹介します。

【東北支部】
 6日12:10仙台発の便で広島空港へ向かうも、広島到着間際に視界不良のため仙台空港に引き返し、伊丹空港へ乗り換えました。伊丹空港から新大阪までは大渋滞の中なんとか移動、新幹線で広島に向かうも、岡山駅で停車19時間(車中泊を含む)、動き始めたのは7日の18時、帰路も危うくなり、新大阪方面へ引き返しました。

【東北支部】
 土曜の夕方の時点で帰れないと思った。
なので、岩国空港を調べたら羽田と那覇便がある。羽田は満席。
那覇からは、千歳や仙台は当然で羽田や中部、伊丹が満席。
那覇〜福岡だけが一席空いてた。
当初から復路は福岡〜伊丹〜仙台をとってたので都合が良い、今しかない!ってことで岩国〜那覇〜福岡を予約を。しかし高額。なので株主優待券を医院でお留守番のスタッフに頼んで写メ送信。株主価格でチケット手配。
タクシーの配車センターに電話したら5:00 ならOK だということでそっちも手配 。
その後、新幹線が動きそうだったけど、また雨が降り出すとのことだったので予定通り5:00 出発。
普段高速使って1時間の道のりが下道で45分。
空港が開く前に着いて、出発まで5時間待ち。
建物の中に入って一息してスマホで山陽新幹線が通常運転と知る。
ガビーん!
一方で岩国〜羽田便のキャンセル待ちが数名呼ばれる。
俺、間違ってるか?と思ったら24時間待ち。昨日も来てたらしい。
まぁ、それでも那覇でソーキそば&海ぶどう食べるまでは良かった。
福岡での乗り継ぎが30分しか無かったのに、出発が25分遅れた。
福岡〜羽田便を仮予約してから、那覇〜福岡便に搭乗。
やはり25分遅れで到着。
そしたら福岡〜伊丹便も出発20分遅れ。
しかも、出発が7番ゲートで到着したのが6番ゲート。
ドアからドアか!と思ったら隣のターミナル。
早歩きで行って仮予約した分をキャンセルしてたら搭乗始まってた。
伊丹での乗り継ぎは60分 - 20分あるから余裕。
6番ゲートに着いて出発も6番ゲート。
搭乗したらCA さんに「おかえりなさい」と言われた。
それで、仙台空港視界不良につき条件付き。
ダメだったら関西国際空港に戻るかも。
無事に着陸出来たからいいけど関空だったら立ち直れない。
ホテルから家に着くまで18時間の荒行でした

【関東支部】
 7日の段階で新幹線が危ういとのことで、広島から岩国へ移動しそこから羽田への移動を考えて、メンバーで乗り捨てレンタカーを確保!当初の予約に対して、無料で振り替えてもらえ、振替してもらった便は19時半発のため、時間的にも十分な余裕があり道もすいていて結構快適なドライブをしていました。

 途中寄り道して観光する余裕もあり「よかったね〜」という楽勝ムードが車内に広がっていました。
ところが道のりの二分の一か三分の二くらいのところで、大どんでん返し、
「お客様の搭乗予定の便は機材整備のため欠航となりました」のメール!
なんじゃそりゃ〜!一同愕然となりました。

それから色々なところに電話したりしてかなり色々な試練を受けながら、
(話せば長くなりますが)
結局広島駅からこだまで東広島へ、そこからタクシーで広島空港へ行き、
20時50分の便で羽田に帰りました。

あとから思えば面白い思い出となるでしょうが、大変でした。


他にも大変な思いをされた方が多いと思います。
もちろん学会員だけでなく、家族を失った方、家を失った方、本当にお気の毒です。
お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りいたします。
posted by 副院長 at 19:32| Comment(0) | TrackBack(0) | '18ニュースレター

2018年06月12日

Vol.185 「患者さんの声に耳を傾ける」

 今年はスポーツ界の不祥事がずいぶんと取り上げられた上半期でしたね…。やはりスポーツはする人も見る人も元気になれる存在であってほしいと思います。

 昨年の12月、一人の顎関節症の患者さんが来院されました。以前通っていた何件かの医院でも治療をしてもらっていたそうですが、患者さんの満足するところへは届いていなかったそうです。初診日にお会いする前から自らの病院歴を綴ったFAXをいただくなど、その悩みの深さを目の当たりにしました。

 一見歯並びもきれいでさほど問題がないように見えてしまいますが、大臼歯部しか噛んでおらず、その大臼歯は(治療目的で)溝が埋められており、オリジナルの噛みあわせから離れていっているように感じました。通常通りレントゲンとアキシオグラフという噛みあわせを診る機械で診査をし、その患者さんに最適な噛みあわせを確定し、その位置で噛めるように作製したマウスピースをセットしました。しかし、安定しない下あごはそこで収まらず、アチラコチラに動けてしまうため、一点に定まるような2個目のマウスピースをセットしました。それでも下あごが後ろに入ってしまう現象を止めることができず、私も治療方針に悩んでしまう時期がありました。

 前医からのネガティブな情報提供があったため、私の提案する治療方針になかなか賛同してくれない時期がありました。しかし、患者さんも必死です。「こうしたらいいんじゃないか?」といろいろなアイディアを私にくれました。私もそのアィディアに対してまっさらな気持ちで接したおかげで、新たな治療法を見つけることもできました。

 現在のその患者さんの状態は、この方向の先にゴールがあると確信してくれていると思います。しかし、顎関節症を悩んでいる患者さん全てに対して、同じ方向を向くことができるように治療ができているわけではありません。私自身のいろいろな意味での成長が必要だとは思いますが、本当の意味で「患者さん声に耳を傾ける」ことの大切さを、改めて実感いたしました。歯科医学は科学の一分野ですから、理論的背景を成書から学ぶ姿勢は今後も続けていきますが、目の前の患者さんから新しい治療法を見つけるヒントを貰えることに気づけたこと、心から感謝いたします(^^)
posted by 副院長 at 15:23| Comment(0) | TrackBack(0) | '18ニュースレター